冷やせばいい

妻を迎えに来た夫が開口一番「というわけで、今日は冷やし中華を食べましょう。」
正直妻には理解できなかった一言である。何せ3月と言ってもまだまだ寒いのだ。まだまだ寒い上に、雪だってあるし、それに冷やし中華というものは夏の食べ物ではないのか？作れと強要しているわけではないので、どこで食べるのだろう。「幸楽苑は3月1日から冷やし中華がメニューに乗るのです。幸楽苑の冷やし中華を食べて春を感じるのです。」夫は静かに、かつ何処か楽しげに言った。
すごくワキワキしているので今日の夜は冷やし中華を食べに行くことにした。
幸楽苑に着くと、ワキワキした夫はメニューを見入り「わぁ海老塩つけ麺だってー」「鉄鍋チャーハン美味そう！」
やたら嬉しそうだ。だが、妻は知っている。海老塩つけ麺にも鉄鍋チャーハンにも興味がないことを。冷やし中華にしか興味がないことを。妻は知っているのだ。一通り冷やかしも終わった様子で、うやうやしく冷やし中華を探す夫。
だが、メニューには冷やし中華の、欠片も載っていなかったのだ。目も当てれないほどの落胆振りを見せつつ、件の海老塩つけ麺なるものを頼み見事に消化不良の様子であった。

帰宅後、録画していた深夜食堂２を観たところ、よりによってお題が冷やし中華。キャストに向かって憤慨する夫。まさに踏んだり蹴ったりの一日ではなかっただろうか。
妻が食べた普通のつけ麺は、相変らずの美味さであったことを補足しておく
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